便秘薬には腸を刺激する便秘薬と便を軟らかくする便秘薬があります。パッケージの成分表をしっかり見ると大丈夫なのですが、商品に紛らわしいキャッチフレーズを使っている場合もあります。商品ごとではなく有効成分ごとに理解をして比較検討することが良いでしょう。 以下では市販薬について説明します。
便秘には器質性便秘と機能性便秘に分けられます。
器質性便秘は腸が詰まる便秘のことで大腸癌やポリープ、潰瘍性大腸炎などの炎症などがあります。機能性便秘はその原因によって弛緩性便秘とけいれん性便秘と直腸性便秘に分けられます。こちらが医薬品の使用の対象になります。
血便や激しい腹痛、吐き気など普通の便秘と違う症状があれば、器質性便秘が疑われます。器質性便秘が疑われる場合は市販薬で済まそうとせず医療機関を受診しましょう。
便秘薬の対象となるのは機能性便秘です。便秘薬の選択については、①どのタイプの便秘なのか考える②種類に合った薬のカテゴリーを選ぶ③カテゴリーから適切な有効成分を選ぶというステップで考えていきます。
まずは、機能性便秘の3つのタイプについて説明します。
複数の便秘にまたがっていることも普通です。どれか一つだけに該当すると決め込まない方が良いでしょう。例えば、極端なダイエットによる弛緩性便秘と、朝忙しいのでトイレに行く暇がないので直腸性便秘が混合しているといった場合もあります。大まかにどのあたりか考えると良いでしょう。
大腸の動きが弱いために起こる便秘です。便が大腸に溜まる時間が長くなるために、便から水分が吸収されすぎて便が硬くなる傾向があります。女性や高齢者などがなりやすく、多くがこの便秘にあたります。太い便が多いです。
老化による腸の動きの低下や極端なダイエット、運動不足、水分不足、睡眠不足、病気(糖尿病、甲状腺機能低下症、うつ病など)によって引き起こされます。
薬によって起こる便秘もこちらです。便秘を引き起こす薬は抗コリン作用のある薬(睡眠薬やうつ病治療薬、パーキンソン病治療薬など)やCa拮抗薬、降圧利尿薬などがあります。どの医薬品にそういった作用があるかについては身近な薬剤師にご相談ください。
大腸が過剰にけいれんすることで起こる便秘です。大腸が小さく動く代わりに排泄させるための大きな動きが出来ない状態です。細い便やコロコロとした便になることが多いです。過敏性腸症候群などが典型的なものとして挙げられます。
硬い便の後に柔らかい便が出るなど、下痢と便秘を繰り返すことも多いです。原因は精神的ストレス(自律神経の乱れ)、環境の変化などがあげられます。
トイレを我慢することで起こる便秘です。我慢しつづけると便意を感じにくくなります。人間の体は通常、食事による胃の動きに反応して直腸も反射的に動くようになっています。特に朝食後に良く起こることです。しかし、このタイミングを逃すことで直腸に便が到達しても排便反射が起こらす、便が停滞して排便が困難になります。
状態 | 方針 | 薬以外の方法 | 薬 |
---|---|---|---|
大腸が弛緩 | 大腸を刺激 | 香辛料、酸味、脂質を適度に
非水溶性食物繊維を摂る 適度な運動 |
刺激性下剤 |
便が硬い | 便を軟らかくする | 水分補給
水溶性食物繊維を摂る |
塩類下剤 |
ポイント
・薬以外の方法→塩類下剤→刺激性下剤の順に検討する方が良い
・刺激性下剤は習慣性があるので出来るだけ使わない方が良い
・刺激性下剤は使用頻度さえ守れば絶対に使ってはいけないという訳ではない
状態 | 方針 | 薬以外の方法 | 薬 |
---|---|---|---|
腸のけいれん | 腸の動きを整える
腸への刺激を減らす |
香辛料、刺激物、脂質、アルコールを控える | セレキノンS |
便が硬い | 便を軟らかくする | 水分補給
水溶性食物繊維を摂る |
塩類下剤 |
ポイント
・セレキノンSは実店舗でしか販売していない
・ 刺激性下剤は絶対に使わない。
・膨張性下剤を謳っている商品でも刺激性下剤の成分が含まれる場合があるので使用しない。
状態 | 方針 | 薬以外の方法 | 薬 |
---|---|---|---|
便意が無い | 便意を作る | 朝食後のトイレを大事にする
腹式呼吸 30分以上の歩行運動 |
なし |
ポイント
・薬以外の方法が上手くいかないとき、刺激性下剤や坐剤、浣腸を使う
・食べ物を食べると胃が動く、胃が動くと直腸も動く、食後を大事にする
弛緩性便秘と直腸性便秘の両方の方針で行く
・大腸を刺激する下剤
・頻繁に使用すると大腸が刺激に慣れるので、出来るだけ効果の弱い薬を少なく使う
・効果(≒副作用)の強さはアントラキノン類(センナ、ダイオウ、アロエ)<ピコスルファート<ビサコジル
・だいたいの目安
長期戦の場合、2、3日に1回くらい飲みたい場合はアントラキノン類
ピコスルファート、ビサコジルはもうちょっと間を空ける
短期集中戦として使っても良い。しかし、出口戦略も必要。
この場合、Goodman Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(世界的にめっちゃ有名な教科書)にはピコスルファートの連続使用は10日までにしといてねという趣旨が書かれている。目安として考えていただければ。
・アントラキノン類は授乳中はダメ
※複数の成分が入っていないものをピックアップした
センナ
アロエ
ピコスルファート
ビサコジル
・便に水分を含ませる下剤
・水分をたくさん取ると効果的
・酸化マグネシウム1gにつき約350gの便が増量
・おなかを刺激しないので服用量の増加や腹痛は起こりにくい
・酸化マグネシウムを長期で服用している方、腎臓の病気の方、高齢の方は「高マグネシウム血症」を起こすことがあります。吐き気や立ちくらみ、めまい、脈の異常、皮膚が赤くなる、力が入りにくい、身体がだるい、ぼんやりするといった症状が現れれば服用をやめて医療機関を受診しましょう。
新レシカルボン坐剤は二酸化炭素を発生させてその勢いで便を出す仕組みなので、刺激性便秘薬のような慣れることも少なく、塩類性下剤のような効き目の不満感もありません。
すべての便秘に
便が硬い場合:水溶性食物繊維
便が出にくい場合:非水溶性食物繊維
※非水溶性のみのサプリは見つかりませんでした。
センノシド(センナ)含有の医薬品は「生薬配合」や「自然に近いお通じ」などとよく表現されます。いかにも副作用がなさそうな表現です。確かに副作用は少ないです。しかし、副作用が少ないという意味は①大腸で腸内細菌に代謝されるまで薬効が無いので、胃や小腸、体内での副作用が少ない②他の刺激性便秘薬と比べて効き目が穏やかなので他の刺激性便秘薬と比べてお腹が痛くなりにくいという意味です。センノシドは刺激性便秘薬という薬理作用が確立された西洋薬で、腸が刺激に慣れる、おなかが痛くなるリスクは存在します。アロエ、ダイオウも同様です。
膨張性下剤の特徴は便の量を増やす薬ことで、確かに副作用は少ないです。しかし、下剤としての効果が少ないためか刺激性成分が含まれている商品があります。そもそも毎日飲むことを前提とした膨張性の成分と頓服としての飲むことを前提とした刺激性成分を配合するというのは相性が良くないと思います。毎日刺激性便秘薬が必要なケースならばと考えると高齢が原因で腸の運動が低下する、他の薬の影響で腸の動きが低下すると言ったケースくらいでしょうか。
どの薬も一長一短で、薬のみに頼ると行き詰まる可能性が高いでしょう。生活習慣を改善させないといけません。具体的には、食物繊維や水分をよくとり、運動をすることです。また、便の出やすいタイミングもあります。食後です。胃結腸反射と言って食べ物が胃に入ると腸も一緒に動くという現象があります。食後にトイレに行けるようなスケジュールを組むといいでしょう。特に朝食後です。朝は忙しいでしょうが、このタイミングにトイレに行く暇もないようなスケジュールを組むことは良くありません。これらは言うのは簡単ですが実行は難しいでしょう。しかし、流行や奇策に走らず向かい合うことが大事です。
※この記事はご購入前に一般的な知識を知っていただいて、大まかなアタリをつけていただく事を目的とするもので、個別具体的なケースに適しているかどうかについて言及するものではありません。購入時は薬剤師または登録販売者と相談して薬を決め、説明を受けましょう。説明がこの記事と違っている場合は販売店の方針に従うようにしましょう。
※この選択方法はあくまで当店の見解です。
他の選び方を否定するものではありません。